ガムラスタン〜IKEA

 その後は歩いてガムラスタンというエリアに向かう事にする。この時歩いた道がイッツアストックホルムな感じではなかろうか。水があり、歴史的な建物があり、煤けた車が走る。車道も歩道も流れは多からず少なからず。淡々と、クールに、煤けていて、かつなにより美しい。自然と都市の融合っぷりは理想形で完成形と言って良い程の素晴らしいバランスなのでは無いだろうか。まあ自分は他の国々には行った事は無いのでなんとも比較は出来ないのだが、とにかく目に、心に、焼きついた。


 そんな気持ちで歩いていればすぐにガムラスタンエリアに入る。ガムラスタンは直径500メートル程の島で、ここには王宮があり、景観はより一層古臭く伝統的になる。海岸を歩いてガムラスタンに入り、左を見やれば実に広い坂道。そこを上がるとバカでかい王宮がある。王宮の前には衛兵が立っている。見なかったが、交代時の景観は一大パフォーマンスであるらしい。王宮の周りはなんやら入り組んでいて、当時の街のつくりを想起出来るような感じになっており、歴史を偲ばせる。


 ガムラスタンは上記の通り500メートルくらいのエリアなので、観光気分で歩いているとすぐ中央エリアに入る。人通りがにわかに多くなり、店がちらほらと見えてくる。そんな中をちょっと行くとガレリアンというデパートがあり、入る。店内はまあデパート然としたデパートで、デパート自体はまあ日本なんかと余り変わらず、特に面白みはさほど無い。そろそろトイレに行きたくて行ったのだが、5Krの料金がかかった。こういう中心地のデパートでは恐らくどこでもお金がかかるはずだ。このシステムは良くないと思った。便くらい自由にさせてもらわないと。


 ガレリアン自体には用は無く、用があるのはガレリアン前から出発するイケア行きの無料送迎バスである。このバス亭なのだが、我々の持っていたガイドブックでは、バス亭の位置が地図に書かれているのと違っていたのだった。が、ガイドブックが一つ前のものだと出発前に本屋で気付いていて、その際に比較の為にMAPを見比べていた所、たまたまこのイケア行きバス乗り場の位置の違いを発見したのだった。もしもこの事が無かったら、うんざりあっち行ったりこっち行ったり探し回るところであった。この旅行、そういう微妙な所でのラッキーが多い*1


 バスは一時間おきで、毎時丁度00分発あったが、バス亭を見つけた時は確か13時45分とかで、これもまあラッキーであろう。もしも14時10分とかだったら・・・意外とどうしようも無いところであった。結構歩いて疲れているので歩く気はおきないし、歩いたとしても戻って来なければならないし、ちょっと喫茶店で一服しても時間を相当に無駄にしてしまう、とアンラッキーな事この上無かった事であろう。で、バス亭で適当に並んで待っているとIKEAとでっかく書かれたバスがやって来た。バスは皆が並んでいる所には止まらずに少し先に停車した、と思いきや皆一斉に順番などおかまいなしに一斉にバスに駆け寄る。どうやらこの国ではバス待ちの際の順番という概念は無いようである。しかし面白いのは結局並んでいた全員が座って、空席も無ければ立っている人も居ない。この辺の多からず少なからずがイッツアストックホルム!と感心した*2


 バスで揺られて約30分*3IKEAに到着。敷地もでかけりゃIKEA自体もデカい。IKEAの構造は基本的に円形で、外周地帯は様々な部屋のサンプルで、内側に実際の商品みたいな感じで、外周の部屋のサンプルを見て回るのが実に楽しい。様々な部屋が次々と、とまあ一言で言えばそれだけだが、その楽しさよ。ソファに座って、パソコンデスクに腰掛けて、想いをはせるのだ。家族の団欒と己の作業の中和の理想系はいかな形か?これか?これか?と。狭からず広過ぎず、安息の場であると同時に適度な統制を己に課し、否応無しに出したものをしまい、よどまず溜まらず、毎朝起床する度、毎晩帰宅する度常に同じ画ヅラの、退屈でもあり安心でもある、そんな部屋はこれか?これか?と。


 また子供部屋、子供グッヅの階もまた非常に楽しい。夜10時、しぶる子供を寝かしつけ、おやすみのキスをし、また夜に何度かふとんをかけなおしに来て、そっとおでこにキスをして優しく微笑む部屋はこれか?これか?と。というのは冗談であり、実際は自分が少し童心に返る、という方が当てはまる気がする。幼稚園の庭を見たり、フレーベル社の本を見たり、プール道具入れのいかにもビニール、って感じの素材、の匂いを嗅いだ際にふっとよぎるあの感じ、というか。そして子供部屋こそ北欧の本領発揮なのである。カラフルをうるさくならずに使うという、北欧スピリット、北欧イズム、による子供部屋ときたらそりゃあもう実に色を使うのだが、部屋の印象が常に明るい、楽しい、止まりで、やり過ぎのネガティブな方までは決していかないのだ。

IKEAは2006年に日本でもオープン予定であり、楽しみである。
http://www.ikea.jp/
イケアの理念は実にLOWPOWER精神である

 IKEAを出て再びバスに乗り戻る。行きと違って帰りは何故か所々に止まりながらだったので、現在地がどこなのかよく解らなくなって多少不安になったが、中央駅前で止まったのでそこで降りる。駅付近のデパートに入り、地下のスーパーに行く。これが期待通りいい感じのものの宝庫で、見ているだけで楽しい。スーパーなんかもいちいち高いイメージがあったのだが、実際はそうでもなかった。高いものは高いかもしれないが、安いものは安い。500mlの缶チューハイなんて確か7クローナくらいだったと思う。1クローナ15円で105円くらいである。ハムやチーズやなんかも大量に種類があり、安いものは安い。
 さすがに疲れきって、地下鉄でRadmansgatan駅に戻る。ホテルに着いた後ベッドに横になっていたら二人とも眠ってしまったような、いまいち記憶が定かではないが。夜に起きて風呂に入っておかしとサラミでチューハイを飲んでまた寝たような。

*1:アンラッキー回避のラッキーではあるが、それこそが重要なラッキーであろう

*2:まあたまたまだろうが

*3:地図で見る距離の割りにはけっこうかかると思う